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SF

・ブレードランナー(1982)

フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作に、リドリー・スコット監督によって制作された、SFの傑作です。地球外の惑星で働いていた人造人間、レプリカントが人間に反逆し、地球へ侵入したことで、レプリカント専門の捜査官“ブレードランナー”であるリック・デッカードが彼らを追うことになる物語。特に注目して欲しいのは、敵レプリカント役であるロイ・バティーを演じたルトガー・ハウアーの演技です。私はこの作品で彼の演技を見て、初めて人の表情を見ただけで「怖い」と感じました。ぜひ一度見て欲しい演技です。また、ラストバトルからエンディングまでの流れと、ロイの言葉、主人公の選択が切なく、激しく、素晴らしいものとなっています。また、リドリー・スコット監督がCM畑出身であったため、その画面・色彩管理も特徴的、かつ目を奪われるほどです。多くのカットが“画”として完成されたもので、荒廃した世界が舞台であるにも関わらず、街の明かりと雨で濡れた地面を組み合わせて情報量を増やすテクニックにより、サイバーで退廃的ながらも豪華な画面が作り上げられています。原作小説を読み、ストーリーを比べながら映画を見るのもおすすめです。

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・ブレードランナー2049(1982)

前作の監督、リドリー・スコットが製作総指揮を、カナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を務めた『ブレードランナー』の続編です。ブレードランナーである主人公のレプリカント、Kが、世界の混乱を阻止するため、30年前に行方をくらましたリック・デッカードを捜す物語です。この映画の魅力は、主人公Kと、デッカードの心理描写にあると思います。物語の核心に触れるため詳しくは語れませんが、このふたりの感情の波、それを踏まえてラストシーンを見ると、安堵感や喪失感といった、静かで独特な気持ちになります。デッカードの心情や、その人生に思いを馳せることができるので、前作の『ブレードランナー』を観てから鑑賞するのがおすすめです。

・メッセージ(2016)

私が特に観てもらいたい、おすすめの作品です。『ブレードランナー2049』でも監督を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が2016年に製作した、ファーストコンタクトもののSF作品で、テッド・チャンによる『あなたの人生の物語』を原作としています。物語は、突如、巨大な宇宙船が世界各地に出現するところから始まります。言語学者のルイーズは、船内の謎の知的生命体と意思疎通を図るため招集されます。生命体がなぜ地球へとやってきたのか?頻繁に挟まれるルイーズと娘の記憶は何なのか?大小の謎が収束していき、その答えに気付いた時、自分の見ていた世界がひっくり返ったような感覚になります。この映画は、「このシーンが良かった」というよりも、物語、およびその見せ方、ひとつの映画を全体的に見て、総合的に素晴らしかったと感じる作品です。この映画を観て、私自身、世界や時間、人生の考え方が変わったと感じます。知的好奇心が旺盛な方には特に面白く感じる作品だと思います。本当に、一度でいいから騙されたと思って観てもらいたい映画です。

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・インセプション(2010)

近年、最も「監督の名前で映画が売れる監督」であるであろう、クリストファー・ノーラン監督の作品です。主人公をレオナルド・ディカプリオが演じ、日本の俳優、渡辺謙さんも共演しています。人の夢の中に侵入し、考えを盗み出すというスパイを生業としている主人公。最愛の人を亡くし、犯罪容疑をかけられた彼が、人生を取り戻すため、仲間を集めて最高難度のミッションに挑むというストーリーです。現実ではありえないことが連発する人の夢の中、それを形にした映像は、ダイナミックで驚愕の連続です。画面の大きな変化に対し、主人公たちの心情にもフォーカスされていて、映像作品として見ていて非常に面白い作品です。

・インターステラー(2014)

こちらもクリストファー・ノーラン監督の作品です。舞台は近未来の地球、飢饉や環境変化によって人類滅亡も秒読みではないかというディストピア。家族、ひいては人類の存続のため、元エンジニアの主人公は未開の宇宙へと旅立っていくという物語です。この作品のすごいところは、のちにノーベル物理学賞を受賞する理論物理学者、キップ・ソーン氏を制作に迎え、実際の重力理論や宇宙論をもとにして作られた作品である、というところです。この作品内で描かれたブラックホールと、2019年に史上初めて撮影された実際のブラックホールが似ていたことでも話題になりました。物理理論をもとに考えられた、地球外の宇宙、星の過酷さのダイナミックな描かれ方、さらに主人公と娘の愛と絆など、語り始めれば止まらない作品です。人に映画をおすすめする際、1番はなにかと尋ねられれば、私は間違いなくこの作品を推すと思います。それほど素晴らしい映画です。

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・TENET(2020)

またもやクリストファー・ノーラン監督の作品です。CIA特殊工作員であった主人公。拷問の末に自決用の薬を飲み、気絶した後に目を覚ますと、お前は死んだことになっていると告げられ、謎の組織“TENET”へ勧誘されます。人類破滅の可能性を排除するため、任務を与えられた主人公は、相棒となるニールと共に暗躍する、というストーリーです。この作品のキーワードは『時間遡行』。時間の進む向きが可変であり、原因と結果が逆になるのです。これが、この作品が面白く、しかし難解映画と言われる所以です。時間が逆行しているシーンは映像として新しく、何度も見て理解したくなる作品です。また、主人公とニールの絆、ヒロインであるキャットの自由への渇望は、心に迫るものがあります。私はこの作品にハマって、DVDまで買って何度も見返しました。それくらいおすすめの作品です。

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ホラー

・ミッドサマー(2019)

一時期話題になった、アリ・アスター監督によるサイコロジカルホラー作品。主人公のダニーは、恋人のクリスチャンを含む大学の友人たちと共に、留学生ペレの故郷であるスウェーデンのホルガ村の夏至祭へ訪れます。白夜と美しい風景の中、理解し難い祭の儀式が執り行われ、不穏な空気の中、主人公たちは精神的に追い込まれていく、という流れ。はじめは美しいと感じていた白夜の村の風景も、主人公たちが心理的に追い詰められるにつれて、逆にその美しさが不気味に見えてきます。パニックホラーの色が強いため、ホラーが苦手でもグロいのさえ大丈夫なら見られると思いますし、美しい風景でグロも相殺されるので無問題です。一見脈絡のないホラー作品に感じますが、しっかり考察してみると映画内で起こることそれぞれに理由があることがわかって面白いです。ちなみに監督自身はこの作品を恋愛ものと言っているらしいです。

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・ライトハウス(2019)

ミッドサマーと同じスタジオA24による、実話をベースにしたダークスリラー。19世紀、絶海の孤島で、灯台守がふたりきりで4週間を共に過ごします。その仲は険悪で、ふたりは衝突を繰り返しますが、嵐がやってきて島に閉じ込められてしまう、という話です。この映画で特徴的なのは、全編モノクロ映像であることと、画面のアスペクト比が正方形に近い比率にされていることです。この撮り方も相まって、作品では不気味さや閉塞感が見事に表現されています。ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーの、人間の錯乱や狂気の演技にも圧倒されます。また、この作品は、ギリシャ神話のプロテウス・プロメテウスの知識があると、より楽しめると思います。この神話を知らなくても、映画を観た後に軽く調べるだけでも面白いのでおすすめです。

恋愛

・君の名前で僕を呼んで(2017)

1980年代のイタリアの田舎町を舞台に、17歳の少年と24歳の大学院生の青年、聡明なふたりの、ひと夏の情熱的な恋の模様を描いたラブストーリーです。主人公、エリオをティモシー・シャラメが演じており、吹き替えの声優陣も豪華で、大学院生のオリヴァーの吹き替えは最近ブレイクしている津田健次郎さんが担当しています。この作品の見どころは、なんと言ってもその美しい背景です。北イタリアの美しい風景は、陽の光とも合わさって、全てのカットが一枚の絵画のように素晴らしいものです。また、この作品は特にラストが素晴らしく、「ああ、夏が終わったのだ」という気持ちになります。映像を見るだけでもおすすめなので、是非見てみてください。

・鑑定士と顔のない依頼人(2013)

この作品のジャンルに関してはおそらく色々な解釈がありまして、多くはミステリーと書かれているのですが、ここでは恋愛映画として紹介させていただきます。主人公である優秀な美術鑑定士バージルは、接触恐怖症で恋愛経験のない老齢の男性。ある日彼は、絵画や家具の査定の依頼を受け、古くて立派な屋敷に出向きます。依頼人の女性は一向に姿を見せないのですが、バージルは好奇心に負けて彼女の姿を盗み見て、心奪われてしまいます。その後のふたりの関係性とは……。最後の結末には頭を殴られた気分でした。一度見てみていただきたい作品です。

ドラマ

・最強のふたり(2011)

事故で首から下が麻痺してしまった富豪の男、フィリップと、介護役として雇われた貧困層の黒人の青年、ドリスの交流を描く、実話をもとにしたヒューマンドラマです。はじめは噛み合わないふたりでしたが、関わりを重ねる内に信頼が深まり、唯一無二のバディとなっていきます。体の麻痺によって一歩を踏み出せないフィリップと、無理矢理ながらもその背中を押すドリスの友情がユーモアも交えて描かれている、万人に勧められる感動作です。

・沈黙-サイレンス-(2017)

遠藤周作の小説『沈黙』を、巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化したヒューマンドラマです。舞台はキリシタン弾圧が行われていた江戸初期の日本。師が棄教したという話を聞き、真相を確かめるために日本へ渡ったポルトガルの若きふたり宣教師は、長崎において、キリシタン弾圧の厳しさ、そのような状況下でなおも主を信じ続ける日本人信者を目の当たりにする、という物語です。正直、話自体は160分間一度もハッピーな場面がないです。主人公の視点で物語を見ると、ずっと苦しいしずっと辛いしどんどん絶望的な状況になっていきます。しかし、そのような残酷な環境でもなぜ彼らは信じ続けるのか、彼らはどのような選択をするのかなど、その心情の描写は素晴らしく、見る価値のある映画だったと感じます。

・アマデウス(1984)

古い映画なので公式映像が見つけられませんでした……

かの有名な天才音楽家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに人生を狂わされた、宮廷音楽家アントニオ・サリエリの視点で紡がれる、モーツァルトの死をめぐる物語です。彼らが実際に生きた18世紀の街に近いプラハが撮影地に選ばれ、撮影当時のチェコはソ連の支配下にあったことから、秘密警察のスパイが入るような状態で撮影を行ったとのこと。絢爛な宮廷や舞台を映しながらも、あまりの天才さゆえに周囲に評価されないモーツァルト、天才だからこそモーツァルトを理解することができ、それゆえ自分との差に苦しむサリエリの苦悩と彼らの末路が生々しく描かれています。

・ノスタルジア(1983)

ロシア(ソ連)の映画監督、アンドレイ・タルコフスキーが、イタリアで製作した作品。監督自身はこの作品の完成後にソ連から亡命したといいます。主人公であるロシアの詩人、アンドレイが、ロシアの音楽家、サスノフスキーを追い、通訳の女性と共にイタリアへ赴く……というあらすじです。解釈の難しい作品で、アートや表現に近い印象を受ける映画ですので、ストーリーばかりを追っていると、人によっては眠くなってしまう人もいるかもしれません。しかし、建築や風景の美しさや、ちょっとしたカットでも見入ってしまうレイアウトや撮り方は、映像芸術として大いに価値がある作品だと感じます。

ミステリー

・天使と悪魔(2009)

ダン・ブラウン三部作と呼ばれる作品群のうち、二作目となる作品です。ダン・ブラウン著の同名小説を原作としている、ミステリサスペンス映画となっています。宗教象徴学を専門とする主人公、ロバート・ラングドン教授が、秘密結社「イルミナティ」の、カトリック教会に対する、ともすれば無差別に人々を巻き込む大惨事になりかねない陰謀を阻止するため、ローマやバチカンを、謎を解きながら奔走するというストーリーです。ダン・ブラウン三部作の中で、最も面白いと感じたのがこの作品でした。特に印象深かったのは、すべての謎が解けた、その後のすべての結末のシーンですが、もう完全にネタバレになってしまうので、やはり実際に見ていただきたい作品です。

前作『ダヴィンチ・コード』(2006)

続編『インフェルノ』(2016)

・オリエント急行殺人事件(2017)

あまりにも有名なアガサ・クリスティの名作小説を、俳優のケネス・ブラナー氏が監督、および主演として新たに制作された作品です。舞台は1934年、私立探偵エルキュール・ポアロが乗る寝台列車、オリエント急行内で、とある富豪が殺害されます。動く密室内で起きたん殺人事件、乗員と車掌をあわせた13人の容疑者となる中、ポアロは事件解決に挑む、という物語です。私は原作小説の内容を知らないまま本作を鑑賞しましたが、物語の真相がわかったとき、なるほど!と納得とともに驚きを覚えました。

その他

・ダンケルク(2017)

これまたクリストファー・ノーラン監督の作品です。第2次世界大戦時、フランスのダンケルク海岸において、史上最大の救出作戦と言われるダイナモ作戦が展開された、ダンケルクの戦いを描いた実話ベースの作品です。ドイツ軍に包囲された英仏連合軍を、イギリス側が民間の船舶までも総動員して兵士40万人の救出を試みる様子が描かれます。空、陸、海の3視点で戦いの様子を見せ、物語のラストに向かって3状況がひとつに収束する、まるで群像劇のような構成となっています。戦争をテーマにした映画を見たのはこれが初めてでしたが、ノーラン監督による素晴らしい映像に魅せられると共に、空、陸、海、それぞれの視点の登場人物たちの覚悟、心象は鬼気迫るものがあります。個人的に、海軍中佐を演じていたケネス・ブラナー氏の最後の演技が、本当にカッコイイ!と感じました。

・キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)

1980年に出版された、フランク・ウィリアム・アバグネイル, ジュニアによる自伝小説をもとに、スティーヴン・スピルバーグ監督により制作された作品です。1960年代、パイロットや医師を偽装し、実際に小切手偽造による詐欺事件を起こした若き天才詐欺師、フランク・ウィリアム・アバグネイル, ジュニアと、彼を追うFBI捜査官、カール・ハンラティの姿を描いた映画です。レオナルド・ディカプリオが演じるフランクの巧みな弁舌とそれにまんまと騙される人々、対してフランクの嘘がバレそうになる緊張感などが、面白おかしく描かれています。