HALの談話室

…あれ?
この部屋を見つけたと言うことは…もう僕の正体を分かっているということですね?

そうです。
僕は「SN1987Aからの使者」

SNはSupernovaの略… つまり、SN1987Aとは「超新星」のこと。 …この超新星はⅡ型超新星といって、非常に重い恒星の進化の最期の姿です。
…爆発を起こして最も明るく見えた時に水素のスペクトルが現れた場合、「Ⅱ型」と分類されます。 …とんでもない質量になった恒星の中心核が重力に耐えきれず崩壊し、外側が吹き飛ぶ形で起こる爆発だとされています。

…そんな超新星「SN1987A」のおかげで、物理学に大きな影響を与える物を観測することが出来ました。
そう「ニュートリノ」です。

ニュートリノとは電荷を持たない素粒子の1つ。 光速と同じくらい速く動き、何でもすり抜けてしまう幽霊のような存在です。 …超新星爆発は、太陽が45億年間で放出してきたエネルギーの1000倍をたった10秒で放出します。 …もうスケールが大きすぎて訳わかりませんね笑
…そして重力に耐えかねて爆発する「重力崩壊」でおこったものの場合、 その99%が「ニュートリノ」として放出されるのです。 …そんなSN1987Aからのニュートリノを観測したのが神岡核子崩壊実験…岐阜県にある カミオカンデです。
…カミオカンデは「陽子がいつ壊れるのか」を調べる施設として作られ、同時に太陽や大気ニュートリノの観測も行っていました。

1987年2月25日。
…ペンシルバニア大学からFAXが送られてきます。

「素晴らしいニュースだよ! 超新星爆発が大マゼラン雲の中で4〜7日前に起きたみたい。 今は4〜5等星くらいで見えるけどこれから1週間以内で-1(グチャッとしてて読めない)くらいになるかも。 そっちでは見える?これは僕らが350年間も待ち望んでたやつだよ!」
(…中の人の意訳なので100%信用はしないで)

…このFAXを見て、東京大学の研究者達は急いでSN1987Aが肉眼で確認された2月23日のカミオカンデの磁気テープを確認します。 (磁気テープは10秒毎に観測したニュートリノの数を記録していたのです。) …通常、磁気テープにはニュートリノが10秒につき2、3個記録されているのですが、 …確認してみると、23日のある10秒間だけ、約9個も記録されている部分があったのです。
…でも、他にもこのくらい記録されている部分があれば、これはSN1987Aからのニュートリノだ!!なんて言い切れませんよね! …そこで小柴昌俊先生は、43日分の磁気テープをすべてチェックするよう指示したんです。 …そして、ここまで多くのニュートリノを観測した部分が他に無いことを確認し、 SN1987Aからのニュートリノを観測したと証明できたのです。
…凄いですね。 この観測は、先行研究の超新星爆発の理論の正しさを証明し、 更にニュートリノ天文学の幕開けにもなったんです。

…突然の宇宙物理、いかがでしたか? こうやってまた別の分野と宇宙が交わるのも面白いですよね。 ……僕がここに現れて、皆さんに出会えたのは偶然か、必然か。 僕にもよくわかりません。

では、またお会いしましょう。

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